「あ゛ー…ったく……向いてねー…」
「えー?フェガリお兄ちゃんって頭いいんじゃないのー?」
「……お前の『頭いい』がどーゆー理屈かは知らねーが、
『頭がいい』のと『向いてる』かってのはイコールじゃあないんだよ」
「えー?」
「自分の仕事を好きじゃない者は、仕事からも愛されない――じゃねーが、
できるのと好きかがイコールじゃないっつーことは、できるのと得意ってのもイコールじゃねーんだよ――…ま、お前の『魔法』と一緒だな」
「ああ〜〜なるほどー」
ことわざを引用して解説した――が、いまいちピンときてないらしいヴィーに「お前の」と実例を挙げてやれば、
そこはさすがに自分のこと、すぐに合点がいったようで、「あ〜」と納得の声を漏らしながらヴィーは「うんうん」と頷いた。
学生の時分、俺は所謂ところの「文武両道」――万能の優等生だった。成績に関してだけは。
事実として、俺は座学でも学年トップの成績を収めていた――んだが、俺の個として、座学ってのは正直好きじゃなかった。
…ただ、「好きじゃねーし」と座学を放棄して、ワーストの成績を取ってきた――ら、
ババアにこってり扱かれ、それで死ぬ目を見て以降はイヤイヤながら「死なないため」に適当に勉強したワケだが。
ヴァンピールの上に立つ存在には、賢さが求められる――が、その賢さは学校の勉強で重要な「賢さ」じゃあない。
強いて言えば、数字をはじき出すための頭の回転の早さってのは一つ求められる要素だが、
「早さ」っつー点に関しては、トップにとってはそこまで重要じゃあない。
知識と経験、そして与えられる情報と問題の全てを上手く使って結論に至る賢さ――ってのが、頭領に求められる一番重要な「賢さ」だ。
――で、俺はその賢さってのを持っていて、かつ苦手でも嫌いでもない。
…かといって、他人押しのけ一団の先頭に立つのが好き――なんて変わりモンでもないんだが。
…まぁとにかく、俺は頭領として「頭を使う」ことには慣れているし、得意だとも思っている――が、
…こう学者か経理的に「頭を使う」ってのがどーにも性に合わんワケで。
それをわかって避けてきた――というかニアやらに任せてきた顛末がコレ、ってワケだ。
…我ながらまぁなんとも――
「こーゆーのは、ヴォルお兄ちゃんとシューくんの得意分野だもんね〜」
「…そーだな」
錬金術師にして魔法楽器職人――であるヴォルスだが、錬金術師っつー職業柄、
研究者的な調査と研究、更に推論だの仮説だのを立てる作業を得意としている――が、
あくまでヴォルスは適性があるってだけで、そもそも分野違いだ。
素人よか上手くやれるだろうが、シュテルと比べてしまえば色々と不十分のある仮定になるだろう。
…とはいえ、やる気のない俺がやるよりはマシだろうし、そも無いよりはずっとマシ――…なんだが、
「…やる気ないなら寝てれば?」
「………」
「情報の解析と集計程度、お前ならこなせるとは思うけど――ニアならお前の半分以下の時間で済ませられるだろうし。
…さらに言うと――ニア、寝なくても元気だし」
「あ〜そっか、ニアちゃん上級死霊だもんねー」
一人掛けのソファーの上に座り、管理者に用意させた魔孔の活動記録を眺めながら言う――白狼。
コイツの言い分はひっくり返しようがなく正論――なんだが、そうとわかっていてもイラっとはする。
――自分の無能を棚上げした、ダッセー八つ当たりなんだが。
「でもルーちゃん、時間がかかっても情報がまとまってた方がいいんじゃないの?」
「…きちんと仕上がった『情報』ならね。
でも中途半端なモノ渡すくらいなら、端から自分でやらせた方がいいんだよ――
――…ああいう分野のヤツは自分でまとめた情報の方が勝手がいいからね」
「ふーん?そー――れはわかったけど、なんでフェガリお兄ちゃんに『お昼寝』??」
日光に弱い吸血鬼は、日の出ている時間帯を嫌忌して日中は眠っている――というのが伝承に語られる吸血鬼の生態。
だがそれはあくまで人間の創作から成る妄想だ――…まぁ、そういう生活を送っているヤツも居るっちゃ居るが、
そんな生活を送ってるヤツは、吸血鬼の世界でも「ぐーたら」と呆れられるイレギュラーであって、一般的じゃあない。
――要するに、吸血鬼に昼寝なんぞは不要なワケだ。…人間やらと同じく「寝不足」ってんなら必要だが。
ある意味で吸血鬼らしからず、昨晩はぐっすりと眠った俺――だけに、昼寝なんてのはまったく不要だ。生物的には。
……一応、魔力ってのは睡眠――ってか活動エネルギーの消費を極限まで抑えた状態、にすることで補填が進む。
…ただ吸血鬼的に考えると、睡眠はかなり効率の悪い回復方法で。
こんな方法で魔力を補おうとするヤツなんざ、アホな菜食主義者くらいなモン――なんだが、
「…フェガリが寝てる間に、俺の神気を馴染ませるんだよ――で、
夜になったら馴染んだ力を全部消費して、減った魔力は神気で補って――ってやっていかないと、
魔孔を塞ぐだけの術に必要な魔力、捻出できないからね」
「っ………お前…なぁ……そーゆーことは早く言えよっ」
「はー?それくらい自分で気づきなよ――
…大体さ、この記録見てなんとも思わないワケ?このほぼ無策の、火力でどーにかしようとしている状況で、さ?」
「…――………だから嫌になってんだろーが……」
「………ぁあ〜…」
事務的に情報の整理をする――ってのが性に合わないことに加えて、
悪い情報を見ても処理に専念する――ってのが、これまた性分として、俺には向いていなかった。
悪い情報を見ると、どうしてもそっちに思考が持っていかれる。
考える頭がある分なのか、与えられた情報で判断するっつー統率者の癖なのか、
無意識で情報をまとめるよりもそこから考えを発展させることに意識が向くから――…作業は進まねーわ、嫌気ば差すわ、…なワケだった。
コッチにとっていい情報がない――といってそれを投げては状況は悪くなる一方だ。
しかも、いい情報がないだけならまだしも、悪い情報があるってのに、
情報分析を投げるのはアホ、バカ通り越して愚か――もとっ越した「死にたがり」の所業だ。
…生憎と、俺は死にたがりじゃあない――し、1から10まで自分の行動に対して無責任ってわけでもない。
だから、言い出しっぺとしてできることはやろうとした――…んだよっ。
「………今更こんなこと言うのもアレだが……ココで算段が付く規模なんだろうな?」
「…お前に俺の力が馴染んで、かつ時機を見れば――塞げるよ。間違いなく、ね」
「ぅん〜とーじゃあさ?
時期がよかったら、フェガリお兄ちゃんにルーちゃんの力が馴染んでなくても――塞げる?」
「それは――塞げない、よ。
魔孔の規模が規模だからね。どっちが欠けても達成できないよ――」
「――フェガリ兄さんだけ、ならね」
不意にガチャと聞こえた音――に反応して、部屋と廊下を繋ぐドアへ顔を向ける。
反射で顔を向けた先――ドアの前に立っていたのはペールグリーンの髪の女。
見覚えのある柔らかい色合いのグリーンの髪を左でまとめ、スラリとして長身に、カームグレーのスーツを纏い――
「リ〜〜ムぅ〜〜〜〜!!!」
「のわっ!」
――と、クールな印象を受けたのはものの数秒。
その姿を認識した次の瞬間にはヴィーに飛びつかれ、ペールグリーンの女――は、本来あるべき姿をさらしていた。
「っだぁ〜!離れろヴィー!!」
「えー!なんでなんでー?!久しぶりに会ったんだから――ギュ〜♪」
「っ…!久しぶりじゃねーだろ!こっ、こないだ会ったばっかじゃねーか!」
「えー久しぶりだよ〜前にあったの先月なんだよー?」
「じゅーぶんっ最近だってのっ!オイっジャクリン!どーにかしろよ?!」
「…………そいっ」
「ンびゃー?!」
いつかの俺と同じく、ヴィーに抱き着かれて尻もちをつき、ヴィーをどうにかしろとお目付け役に抗議した――のに、
ヴィーを引きはがしてもらえるどころかジャクリンにまで抱き着かれた――のは、ペールグリーンの長い髪を二つ結びにした少女。
ヴィーともジャクリンとも毛色は違うが、少女然とした愛らしい姿――が、コイツ本来の姿。
…ただ、当人のこだわりっつーのか趣味っつーのかで、普段はクールでスレンダーなオトナの女の姿に偽ってるけどな。
ヴィーとジャクリンに抱き着かれ、その恥ずかしさと嬉しさでギャーギャーと吠えるペールグリーンの少女――リムフェ・パイモーリア。
それをわかってんだかなヴィーは、あまのじゃくなことばかりを言うリムフェ――愛称・リムに
「えーえー」と言いながらも「嬉しい」やら「好き」だのとド直球の好意を投げる。
んでその直球に耐え切れなかったリムが「どうにか――」とジャクリンに助けを求めれば、
リムのツンデレと混乱をわかってるジャクリンはヴィーに乗っかり、
「嬉しくない?」「好きじゃない?」と、しっぽを楽しげに揺らしながらリムに追い打ちをかけていた。
「………いーのか、止めなくても」
「…………リヴィーお嬢様が楽しそうなので…」
知らぬ間に――いや、リムから少し遅れたタイミングで部屋に入ってきた――んだろうは、ミルクティー色の髪の女。
ヴィーやリムとは全く違う、嘘偽りなくクールな大人の女性、といった風のコイツは、
アネルヴァス家に仕える従者の一族グラボラス家の娘――スィーア・グラボラス。
ボス兄の実妹で、俺にとってはヴィーたちと同じく幼馴染の妹分、だ。
オリナ兄にとってのボス兄ってのが、ヴィーの場合はスィーア――なんだが、
色々あってスィーアは実の兄であるボス兄と一緒にオリナ兄の下に仕えている。
…ただ、今回はどういう思惑やら、黒ノ一族・パイモーリア家の一人娘に付いている――ようだが。
「……リムお嬢様のことはいーのかよ」
「…リムお嬢様は照れていらっしゃるだけで、本心では喜んでおいでですから――」
「――っ聞こえてんぞスィーア!!
オマエがそーゆーつもりならアタシもそーするからな?!!」
「っ…――………リヴィーお嬢様……リムお嬢様を解放してあげてください…」
「え〜」
ヴィーとジャクリンにもみくちゃされるリム――を、放置しても問題ないと言ったスィーアだったが、
そのリムに「そういうつもりなら――」と言われた途端、何とも言えない気まずげな苦笑いを浮かべて、リムからヴィーを剥がしにかかった。
スィーアに脇を抱えられ、ひょいと持ち上げられたヴィーは不満げに「えー」と漏らしているが、
力尽くの抵抗に出るつもりはないようで、そのままペリとリムから離れる――と、
それに倣うような形でジャクリンもリムから離れて立ち上がり、酷く疲れた様子で座り込んでいるリムに手を差し伸べる。
差し伸べられた手にリムは少しむっとしたような表情を見せた――が、その表情のままジャクリンの手を借り、スクと立ち上がった。
「――リム、どーゆー思惑だ?」
「……兄ぃが考えてるより、状況は悪ぃってことだよ」
「ぁあ〜…?」
リムに「どういうことだ」と尋ねれば、
それに返ってきたのは「状況が悪い」というありがたいが嬉しくない答えだった。
リム――の義兄であるヴォルスであれば、俺が島に来れば魔孔を塞ごうとする――と、予測はいくらでもできただろう。
だからそれを見越しての援軍投入――っていうのは、
俺の主観からすればヴォルスらしからない――が、ヴォルスの主観で考えれば、ある意味で違和感はない。
これは俺のため――ではなく、ヴォルス自身のため、なんだろう。
…だっつーことは――…ババアの思惑の内って話だなチクショウめ。
頭の片隅にはあった認めなくない仮説――が肯定され、しようなくやる気が急降下する。
一番嫌な構図になった――が、俺のやることは変わらない。
誰の思惑がどうであれ、島の住民たちの生活をより良くするために俺ができる事――で最速で最良なのが「魔孔を塞ぐ事」だからな。
俺たちの知らない情報を山ほど持っているんだろうリム――に、自分の向かい側に座るように言うと、
リムは俺の言葉に反抗することなく「ああ」と言って、テーブルを挟んで向かい側にあるソファー座る――と、
リムを挟むようにしてヴィーとジャクリンがぎゅむと座る。
「狭ぇ!」「えー」「いいじゃん」と、ぴーちくぱーちくコントまがいのやり取りがはじまるか――と思ったが、
顔を不満に引きつらせながらもリムはそれに文句を言うことはせず、ため息を大きく一つついて、情報の開示をはじめた。
「まず、一番の問題だけを言うと――近く、魔孔の暴走が起きる」
「………原因は?」
「それは今シュテルたちが『その日』と一緒に調べてる。…ただ、おそらくは魔法世界側の問題だろうとさ」
「…それは現世で問題が起きるわけじゃない――ってコトだな?」
「ああ、そうじゃないとさ――…ただ原因が何であれ『防ぎようがない』らしいから……原因に必然性はないらしいけど…」
「…そこまでわかってるのに、まだ原因究明中なの?」
「――それは『知った事』ではなく、『視た事』なのです」
魔界――魔法世界で起きるだろう問題をきっかけに、現世に存在する魔孔が暴走する。
そしてその問題は解明したところで不可避――ということまで分かってるってのに、
未だ問題の原因に見当がついていない――っつーいささか不自然な状況にヴィーが疑問を投げれば、
それに答えたのは――いつの間にやらお茶の準備を整えたスィーアだった。
知ったことではなく視たこと――それが示すところは、
リムの情報が調査と解析の上に成った情報じゃあなく、直接その未来を視て得た情報だということ。
…ただ、先見なんつー高等魔法に精通した逸材ってのは、俺が起きてた時代には――仲間内にはいなかったんだが……。
「…………まさかとは思うが……」
「…ぁ――い、いえっ、六華ではなくて……――…極東の神子、です…」
先見の魔法は、全世界共通で使用も制御も難しい超高等技能――ではあるが、
ババアに認められた大魔女たち――六華ノ魔女であれば難なくこなすだろうと思い、
面倒な展開を危惧して「まさか」とスィーアに問えば、スィーアから返ってきたのは更に面倒な存在だった。
情報元としては、ある意味で信用が置けるが、今の自分の立ち位置が立ち位置だけに面倒なことこの上ない。
…まぁ、六華どもがチョロつくよか、「問題」としては簡単なんだがな――…俺が我慢すりゃいいだけの話だし…。
「あ、もしかしてエリィちゃんのお仲間?」
「はい。極東の陰陽師――シンオウの占術師だそうです」
「………そのエリィってのも神子…か?」
「うんっ、4年くらい前までおばーちゃんのところで修業しててねー?
今はお兄ちゃんの同僚さんなんだ〜」
「……オリナ兄の同僚…ねぇ――…で?お前はソイツとワケ有りか?」
「っ…そっ、そんなんじゃねーよ…っ」
「あー…そっかぁ……リム的にはフクザツだよねぇ…」
「…似てる……もんね」
「…ま、まぁ…外見だけはなっ……」
「…じゃあ中身はあの子の方が似てる??」
「ぁあ゛っ?!!」
「…私だと、詳しくはわかんない――から」
「ぁああ…それはそ――って!んなこと今はどうでもいいだろ?!
今重要なのは魔孔の暴走にどう対処するかで、その情報元――のダチの話やらなんやらはどーでもいいんだよ!」
「――だな。ジャクリン、今はそっち優先だ――根掘り葉掘り聞くなら、事が済んだら――な」
「………うんっ」
「ゥン?!オマエらっ、なに企んでやがる?!」
「企んでねーよ。…それこそ避けようのない――ってヤツだ」
リムをからかおうとしたジャクリンを止めた――のは、あくまで本題を進めるためであって、リムを陥れようとかいう魂胆はない。
…まぁある意味、今ここでジャクリンを止めたのはリムにとって後に不都合を生むだろうが――…当人が「それよりも」っつーんだからいいだろう。
「――で?魔孔の暴走までどれくらい時間あるかはまだ見当ついてないの?」
「へっ、ぅ?――ぁ、ぅ…そ、れは……あのっ……!」
「――シビアに見て最短で3日、希望的観測での最長は10日ほど、だそうです」
「…そう――…3日…か……。
……あんまり余裕は持てない…かなー……――スィーア、魔鍵盤は?」
「明日には届く予定です」
「ん…なら今日は肩慣らし――…が、賢明かな…」
「――あ、そっか。
シューくんたちが調べてくれてるから、フェガリお兄ちゃんたちが調べる必要ないんだっ」
「その通り――…ではあるけど、逆に言えばこれ以上の戦力はまず望めない――って問題でもあったわけだからね…。
…とにもかくにも、フェガリにはヴィーたちに追いついてもらわないとねぇ…」
面倒そう――というよりも、困っているような調子で言う白狼に、「なんだと」と食って掛かる――
――前に、白狼の悩みの種に見当がつく。…激しく癪ではあるが、コイツの懸念は尤もだ。
本調子じゃない――魔力の保有量が劣る上に、戦闘経験までが足らない俺が、ヴィーたちの足を引っ張らないか――っつー懸念は…。
「…スィーア、適当な部屋一つ見繕ってきてくれ」
「はい、承知しました」
「えー?なんでわざわざお部屋借りるの〜?お兄ちゃんのお昼寝中は静かにするよー?」
「………スィーア、ジャクリン、従者たちどー思う?」
「…………いいんじゃない?」
「…え、ええ……フェガリ様ですし……」
「……」
100年の時を経――る前から、ヴィーたちは年齢的には大人ではあった。
だが吸血鬼としてはまだ若造――という扱いだということもあって、性別的な分別をつけてこなかった――が、
それから更に100年が経過しているし、…重ねた年月という換算ではアイツらの方が年上だ。
…だからとその辺りを配慮した――んだが、未だにその配慮は不要らしい。
俺が男と認識されていないのはまぁいいんだが――…他の野郎にまで無警戒なんじゃねーだろうな?
…単純に「妹分」としても心配だが――…それ以上にどこの馬の骨とも知れないバカが、その兄貴たちの逆鱗に触れねーかが心配なんだが……。
…特にリムとスィーアになんかあったら………大真面目にヤベェぞ……。
「…兄ぃ、確かにあれから100年経ってるが――ヴィーのせーしん年齢は据え置きだっ」
「えー!そんなことないよ〜!私だってちゃんと大人になってるよー!ってゆーか!それ言い出したらリムだって据え置きじゃん!」
「ぁあ??んなワケねーだろ。アタシはこれでも教師として働いてんだ。間違いなく昔より――」
「…ヴォルお兄ちゃん前にす――」
「にゃあ゛ーーー!!!」
ヴォルス――リムにとって従兄であり、弱点である存在の名をヴィーが上げる――と、
リムはそのセリフを遮るように叫んでヴィーの口を両手で塞ぐ。
その拍子にリムがヴィーを押し倒す格好になり、それに抵抗してんだかまだ反論しようとしてんだか、
ヴィーは「むーむー」言いながら――…野郎の前で掴むべきではない胸を掴んでリムに抵抗していた。
「………ジャクリン…」
「ぅーん……そもそもリムとは公の場では会わないから………」
「…なら、会った時にはやりかねない――か?」
「それはどうだろ…。ヴィー、あれで意外と独占欲強いし……
…リムのことは特別大好きだから――…幼馴染みの前でしかやらないと思う」
「…ならいい――…ってモンでもねーが……まぁ…今はいい、か…。
……スィーア、やっぱ部屋借りてくれ」
「……承知しました…」
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